2026年7月23日、1ドルは163円99銭でした。9月8日、153円台です。 1ヶ月半で約10円の円高が進みました。
私が積み立てているS&P500の評価額も、当然のように減っています。 それでも、1口も売っていません。積立の設定も1円も変えていません。
理由は単純です。減っているのは円に換算したときの金額であって、持っている会社の価値ではないからです。 そして毎月の積立にとって、円高は「同じ金額でたくさん買える」だけの出来事です。
- 10円の円高で、円建ての評価額がいくら減るのか(実際の計算)
- 毎月3万円の積立が、円高でどれだけ多く買えているのか
- ここで売ると何が確定してしまうのか
- 2024年の円高で売った人に、その後何が起きたか
- それでも売っていい人の条件
- オルカンを積み立てている場合はどうなるか
※金額は毎月3万円積立のモデルケースで計算します。為替は計算を追いやすくするため164円・154円で統一しました(実際は7月23日が163円99銭、9月8日が153円台です)。
1ドル163円99銭から153円台へ。1ヶ月半で10円動いた
2026年7月21日から23日にかけて、円は1ドル163円台まで売られました。 7月23日につけた163円99銭は、1986年12月以来39年7ヶ月ぶりの安値です。
流れが変わったのは7月31日の日米協調介入でした。そこから円は買い戻され、8月3日に155円台、そして9月8日に153円台まで戻っています。 153円台は約半年ぶり、2026年2月中旬以来の水準です。
| 時期 | 1ドル | できごと |
|---|---|---|
| 2026年7月23日 | 163円99銭 | 39年7ヶ月ぶりの円安水準 |
| 2026年7月31日 | — | 日米協調で為替介入 |
| 2026年8月3日 | 155円23銭 | 介入から3日で8円の円高 |
| 2026年9月8日 | 153円台 | 約半年ぶりの円高水準 |
ここで押さえておきたいのは、この間S&P500そのものが暴落したわけではないことです。 動いたのは為替です。それでも、円で見た評価額は減ります。
米国株が1ミリも下がらなくても、円建て評価額は6.1%減る
7月の時点でS&P500のインデックスファンドを300万円分持っていたとします。 指数がまったく動かず、為替だけが164円から154円になった場合、円建ての評価額はこうなります。
減少率は6.10%。米国株の値動きはゼロとして計算しています。
証券会社のアプリを開くと、評価額が18万円減っています。以前から積み立てている方なら、損益欄はプラスのままかもしれません。それでも、先月まであった利益が18万円分削られています。 「株価は下がっていないのに、なぜ減っているのか」。ここで手が止まる人が多いところです。
答えは、あなたが持っているのがドルで値段のついた資産だからです。 中身の会社は何も変わっていません。アップルもマイクロソフトも、7月と同じように稼いでいます。 変わったのは、その会社の値段を円に置き換えるときの換算レートだけです。
基準価額が「資産の価値 × 為替レート」で決まる仕組みと、2026年7月30日の為替介入(市場推計8兆4,500億円・日米協調は28年ぶり)の事実関係は、 なぜ米国株が下がっていないのに評価額が減るのかにまとめています。 この記事は「では売るべきか」という判断の話に絞ります。
毎月3万円の積立は、同じ金額で6.5%多く買えている
ここからが、積立をしている人にとっての本題です。 毎月3万円をS&P500に積み立てているとして、その3万円で買えるドルの量を比べます。
| 買付時のレート | 3万円で買えるドル | 差 |
|---|---|---|
| 1ドル164円(7月) | 182.93ドル | — |
| 1ドル154円(9月) | 194.81ドル | +11.88ドル(+6.49%) |
同じ3万円を出しているのに、6.5%多く買えています。 1ドルの値札が6.10%下がった結果、買える量が6.49%増えたという関係です。セールで6.1%引きになった、と言い換えてもかまいません。買っている側にとって、値札が下がるのは歓迎すべきことです。
この差は、続けるほど積み上がります。12ヶ月続けた場合を計算しました。
154円換算で約21,951円分、月の積立の0.73ヶ月分を余計に買えた計算になります。
1年で約3週間分の買付を、追加のお金なしで手に入れたのと同じです。 減った評価額だけを見ていると、この加算はまったく目に入りません。
取得レートは、勝手に平均されていく
積立をしている人が円高で慌てなくていい理由が、もう1つあります。 買うタイミングを分けている時点で、取得レートは自動的に平均されるからです。
7月に3万円(164円)、9月に3万円(154円)を買った場合、平均の取得レートは158円84銭になります。 単純に足して2で割った159円ではありません。安いときに多く買っているので、平均は自然と安いほうに寄ります。
これが積立の仕組みそのものです。高いときは少しだけ、安いときは多めに買う。 タイミングを当てにいかない投資が成り立つのは、この平均化があるからです。
オルカンを積み立てている人も、話は同じです
ここまでS&P500で書いてきましたが、オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式・オール・カントリー)でも結論は変わりません。 円高で円建ての評価額は減り、積立では多く買えます。
ただし1つだけ、よくある誤解を正しておきます。オルカンは「ドル建て」ではありません。中身は複数の国と通貨に分かれています。
| 国・地域 | 比率 |
|---|---|
| アメリカ | 61.7% |
| 日本 | 5.1% |
| イギリス | 3.4% |
| カナダ | 3.1% |
| 台湾 | 2.6% |
| フランス | 2.2% |
| スイス | 2.1% |
出典:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」月次レポート(2026年3月31日現在)の組入上位10ヵ国・地域。
日本株は5.1%だけで、残りはほぼすべて外貨建てです。だから円高になれば、S&P500と同じように円建ての評価額は減ります。 仕組みが同じである以上、「売るべきか」の答えも同じになります。
S&P500との違いは2つです。
- 日本株が5.1%入っている — この部分は為替の影響を受けません。その分だけ、円高で減る幅はS&P500よりわずかに小さくなります。
- ドル以外の通貨も含む — ユーロ、ポンド、カナダドル、台湾ドルなどが混ざっています。ドルに対して円高でも、ユーロに対して円安なら影響は打ち消し合います。ドル円のニュースだけで評価額が決まるわけではありません。
どちらも、オルカンの中身を分解した記事で書いたとおり、米国が6割を占める点は共通しています。 円高局面での振る舞いに、売買の判断を変えるほどの差はありません。
売った瞬間に、減った18万円は取り返せなくなる
ここで売ると何が起きるか、はっきりさせておきます。
いま減っている18万円は、まだ帳簿の上だけの数字です。まだ何も起きていない、途中経過の金額です。 売った瞬間に、この18万円の目減りは取り返せない形で確定します。取り返す手段が、買い直す以外になくなります。
そして買い直すときには、たいてい値段が戻っています。人は下がりきったところで売り、戻ったところで買い直すからです。 暴落時にやってはいけないことでも書きましたが、この往復が資産を最も削ります。
もう1つ、課税口座で利益が出ている状態で売ると売却益の20.315%が税金で引かれます。 売って買い直すという行為は、その税金を自分で払いにいく行為でもあります。
2024年の円高で売った人に、その後何が起きたか
同じ場面は2年前にありました。数字が残っているので、答え合わせができます。
| 時期 | 1ドル | そこからの為替の動き |
|---|---|---|
| 2024年7月3日 | 161円96銭 | — |
| 2024年9月16日 | 139円50銭台 | 2ヶ月半で13.9%の円高 |
| 2025年11月 | 157円 | 139円50銭から12.5%の円安に戻った |
2024年9月、「もっと円高になる」と言われていた時期に売った人は、この12.5%の戻りを受け取っていません。 持ち続けた人は、何もしないだけで受け取りました。
誤解のないように書きますが、これは「必ず戻る」という話ではありません。 そうではなく、2ヶ月半で22円動いた為替が、1年余りで元の水準近くに戻っていたという事実です。 数ヶ月の為替の動きを予想して売買することが、どれだけ当てにならないかを示しています。
2026年の今回も、7月23日から9月8日までの動きは約10円です。2024年の22円より小さい変動です。
それでも売っていいのは、この3つに当てはまるときだけ
「絶対に売るな」とは書きません。売ったほうがいい場面は、確かにあります。ただし理由は為替ではありません。
- 3年以内に使う予定のお金だった
住宅の頭金、車の買い替え、子どもの学費。使う時期が決まっているお金は、そもそも為替と株価が動く資産に置いてはいけません。円高は原因ではなく、置き場所を間違えていたことが表に出ただけです。 - 積立額が生活費を圧迫している
毎月の積立で家計が回らなくなっているなら、金額を下げてください。売却ではなく減額です。積立を続けられる金額まで落とすことが、結果的にいちばん長く続きます。 - 評価額が気になって夜眠れない
リスクの取りすぎです。ただし全部売るのではなく、金額を減らして「気にならない水準」に調整してください。一度全部売ると、戻るきっかけがなくなります。
円高のあいだにやっておくと後で効く3つのこと
- 評価額を見る回数を、月1回に減らす
毎日見ても行動は変わりません。変わるのは気分だけです。積立日の翌日に1回だけ確認する、と決めてしまうのが確実です。 - 積立額は変えない。増やすなら生活防衛資金を確保してから
「安いから増額」は正しい判断ですが、生活費6ヶ月分を現金で持っていることが前提です。それがない状態での増額は、次の下落で売る原因になります。 - NISAの非課税枠の使用状況を確認する
円高で同じ金額でも多く買えるということは、非課税枠を効率よく使える局面でもあります。年間の枠が余っているなら、使う順番として優先度は高くなります。
よくある質問
その方法が成立するのは、円高がいつ止まるかを当てられる場合だけです。2024年9月に139円50銭をつけたとき、多くの予想は「さらに円高が進む」でした。実際にはそこが底で、1年余りで157円まで戻っています。当てられる前提の作戦は、外れたときに買い直せなくなります。課税口座なら売却益に20.315%の税金もかかります。
逆です。円高は同じ金額で多く買える局面なので、積立を続けるほど有利になります。3万円で買えるドルは164円のとき182.93ドル、154円のとき194.81ドルです。止めるとこの6.5%分を受け取れません。円安に戻ってから再開するのは、値上がりしてから買い直すのと同じ意味になります。
為替ヘッジ付きの商品はありますが、ヘッジには年1〜数%のコストがかかります(日米の金利差が大きいほど高くなります)。15年以上の長期で持つなら、そのコストを毎年払い続ける影響のほうが大きくなります。乗り換えを検討するのは、使う時期が5年以内に迫っている場合です。
結論は同じですが、「ドル建て」という理解は正確ではありません。オルカンの組入は2026年3月31日時点でアメリカ61.7%、日本5.1%、イギリス3.4%、カナダ3.1%と複数の通貨に分かれています。日本株は5.1%だけで残りはほぼすべて外貨建てなので円高で評価額が減るのは同じですが、日本株5.1%の部分は為替の影響を受けず、ドル以外の通貨の動きでも打ち消し合います。
日本の高配当株は円で値段がついているので、為替の直接の影響は受けません。ただし輸出企業は円高で利益が減り、減配のリスクが上がります。高配当株とインデックスの比較で書いたとおり、この2つは値動きの理由が違うので、両方持っていると片方が沈んだときに支えになります。
まとめ:減っているのは為替であって、会社の価値ではない
2026年7月23日の163円99銭から、9月8日の153円台へ。約10円の円高で、円建ての評価額は6.1%減りました。300万円なら18万2,927円です。
同じ期間、毎月3万円の積立で買えるドルは182.93ドルから194.81ドルに増えました。6.5%多く買えています。 1年続ければ、154円換算で約2万2千円分を追加のお金なしで買い増したことになります。
減った18万円は、売らない限り確定しません。売った瞬間だけ、それは本当の損になります。 2024年に139円50銭で売った人は、その後の12.5%の戻りを受け取れませんでした。
今日やることは1つです。アプリを閉じて、積立設定をそのままにしておく。それだけで十分です。 買った理由が「15年後のため」なら、今日の為替は何も変えていません。
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当ブログで解説している銘柄のうち、配当利回り5%以上のものを毎週まとめてお届けします。株価は金曜終値、配当は実際に支払われた実績ベース。計算の前提もすべて明記しているので、ご自身で確かめられます。
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特定の銘柄の購入を勧めるものではありません。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。為替レートは2026年9月8日時点の報道および公表値に基づきます。記載の金額は毎月3万円積立のモデルケースであり、実際の運用成果を示すものではありません。投資にはリスクが伴います。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。
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