元消防士が配当だけで暮らす方法|かんちさんの「売らない」高配当株投資を読み解く

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「いつ株を売ればいいですか」——高配当株を始めた方から、いちばん多く届く質問です。

この問いに、「売る基準は作りません。売らなくて済む会社を選びます」と答える投資家がいます。 元消防士で、49歳で早期退職し、いまは配当金だけで生活しているかんちさんです。年間の配当収入は2,000万円を超えています。

元公務員という経歴が、私と重なります。この記事では、かんちさんの投資法を公務員・元公務員の目線で読み解きます

📌 この記事の出典について

本記事は、ダイヤモンド・オンラインで公開されているかんちさんの連載記事ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門)を読んでまとめたものです。 書籍そのものの書評ではありません。私はまだ本編を読んでいないため、連載で公開されている範囲に限って紹介します。 本の全体像や個別の推奨銘柄については、書籍をご確認ください。

📌 この記事でわかること
  • かんちさんが銘柄を選ぶ「5つのステップ」と数値基準
  • いきなり全力で買わない「打診買い」という考え方
  • 売却基準を作らない代わりに、たった1つだけある例外
  • 暴落を「バーゲンセール」と言い切れる理由
  • 当ブログの基準とどこが違い、どちらを採るか

1. かんちさんはどういう人か

項目内容
経歴元消防士。49歳で早期退職
現在三重県在住の専業投資家。投資歴は約40年
資産8〜9億円(2025年10月時点で9億円)
配当収入年間2,000万円超。生活費のすべてを配当と株主優待でまかなう

公務員から始めて、配当で生活するところまで行った人です。当ブログの読者と出発点が同じなので、参考にできる部分が多いと考えました。

⚠️ 資産8億円という数字は、いったん脇に置きます

9億円・年2,000万円という規模をそのまま目標にすると、ほとんどの人にとって別世界の話になります。 この記事で扱うのは、資産規模に関係なく真似できる部分——銘柄の選び方、買い方、売り方の考え方に絞ります。

2. 銘柄選びは「5つのステップ」で絞る

かんちさんが高配当株を探すときの手順です。

手順基準
① スクリーニング配当利回り3.5%以上で抽出する
② 業績で絞る増収・増益・増配の3つがそろった銘柄だけに絞る
③ 割高を外すPER × PBR が15倍を超える銘柄を除外する
④ 一時要因を外す一時的な材料で株価が上がった銘柄を除外する
⑤ 買うタイミング厳選した銘柄を株価が下がったところで買う

この判定は1銘柄あたり5〜10分で終わるとのことです。そして①を通った銘柄のうち、最終的に買うのは約3割。 7割は途中で落ちます。絞ることが目的の手順だと分かります。

③の「PER × PBR = 15倍」とは何か

聞き慣れない指標かもしれません。PERとPBRを掛け算した数字で、ミックス係数と呼ばれます。 ベンジャミン・グレアムが示した目安が元になっており、15倍以下なら割安と判断します。

たとえばPER10倍・PBR1.2倍の会社なら、10 × 1.2 = 12倍で基準内です。 PER18倍・PBR1.5倍なら 18 × 1.5 = 27倍で除外になります。

PERとPBRを別々に見るより、1つの数字で判定できるのが利点です。片方だけ低くても、もう片方が高ければ弾かれます。

3. 買い方は「打診買い」——いきなり全力で買わない

良い銘柄を見つけても、かんちさんはいきなり全額を入れません。まず少額で買います。これを打診買いといいます。

  1. まず小さく買う。良さそうで割安だと感じたら、試しに買ってみる
  2. 持ってみて判断する。「やっぱり良い」と思えたら買い増す
  3. 自信が持てなければ、そこでやめる。買い増さない

理由はシンプルです。いきなり全力で入れると、予想が外れたときの金銭的・精神的なダメージが大きすぎるから。少額なら傷は浅く済みます。

もう1つ、買う前の除外ルールがあります。業績が上がっているのに増配しない会社は買わない——利益が出ているのに株主に還元しない会社は、その姿勢が今後も続くという判断です。

4. ここが核心:売却基準を「作らない」

「いつ株を売りますか」という問いに対する答えが、この投資法のいちばん面白いところです。

かんちさんは「いくら儲かったら売る」「いくら損したら売る」という基準を持ちません。株価がどれだけ下がっても、評価損がどれだけ膨らんでも、それを理由には売らない。

判断の物差しが株価ではなく企業の実力だからです。株価の上下は市場の一時的な気まぐれ、つまりノイズとして扱います。

そして本質はここです。

🐨 売却ルールを作るのではなく、売らなくて済む会社を選ぶ

「一生持ち続けたいほど良い会社か」で選べば、売る理由がそもそも生まれません。 出口を探さないことを前提に、入口を厳しくする——これが5つのステップで7割を落とす理由でもあります。

ただし、例外が1つだけあります

滅多に売らないかんちさんが、翌日の朝一番に成行注文で叩き売るケースがあります。

株主優待の改悪、または廃止です。

理由は「一度でも優待を改悪する企業は、その後も改悪を続け、最後には廃止する可能性がとても高い」から。 金券が半分になる、金券が割引券に変わる——こうした変化を、企業の姿勢が変わったサインとして読み取ります。

実例として挙げられているのが健康食品のAFC-HDアムスライフサイエンス(2927)です。1,000株保有時の優待が年6万円から年1万円まで削られました

普段はまったく動かない人が、この一点だけは翌朝に売る。この落差が、優待をどれだけ重く見ているかを表しています。

5. 相場観:「クラゲ投資法」

かんちさんは個人投資家を海に漂うクラゲにたとえます。波が高くなれば一緒に浮き、落ち着けば一緒に沈む。波に逆らわないという考え方です。

頻繁に売買することの危うさを、こう整理しています。

  • 取引を繰り返すと体力を消耗する
  • 小さな利益で満足して売り、その後さらに上がって後悔する
  • 信用取引のレバレッジで資産を失う

つまり「小さな成功」が「大きな破滅」を招く。だから推奨されるのは「何もしない」という決断です。 相場が荒れているときは耐え、好調なときは利益確定の誘惑に抵抗する。長く市場にいることが最大の武器になる、という考え方です。

6. 暴落は「バーゲンセール」

かんちさんは暴落を怖がりません。連載の見出しでは「暴落すると、いちばん燃える」とまで書かれています。

株価が下がったら、損切りではなく買い増しです。安く買えるチャンスだと捉えています。

この姿勢を支えているのが配当金です。株価が下がっている間も、配当は定期的に振り込まれます。 現金が入り続けるから、心理的な余裕が生まれ、下落を冷静に見ていられる。

配当が「握力」を生む——高配当株投資の本質を、うまく言い表していると思います。

7. 当ブログの基準との違い

正直に書きます。当ブログの考え方と、一致しない部分があります。

かんちさん当ブログ
最初に見る数字配当利回り3.5%以上配当性向・営業CF・自己資本比率を先に見て、利回りは最後
割安の判定PER × PBR = 15倍以下PER・PBRは参考。減配履歴を重視
売却基準作らない(例外は優待改悪のみ)売るべき4つのサインを持つ
株主優待重視する。改悪は即売却配当が主役。優待は補助的

どちらが正しいか、ではありません

売却基準については、当ブログの考え方を変えるつもりはありません。減配は企業から届く最も明確なシグナルであり、それを無視して持ち続けるのは危ういと考えるからです。

ただし、「売らなくて済む会社を選ぶ」という入口の発想は取り入れる価値があります。 出口の判断を精緻にするより、入口で7割落とすほうが、結果として迷う回数が減ります。

優待についても同じです。当ブログは配当中心ですが、「優待の改悪は企業の姿勢が変わったサイン」という読み方は、配当にもそのまま当てはまります。減配の前触れとして優待の変更を見る——これは使える視点です。

8. 公務員が真似できる部分・できない部分

真似できること

  • 5つのステップで絞る。1銘柄5〜10分なので、通勤時間でも回せます
  • 打診買いで始める。少額から買える単元未満株なら、なおさら実践しやすい
  • 暴落時に買い増す。公務員は給与が安定しているので、相場が荒れても収入が減りません。下がったときに買える立場です
  • 「何もしない」を選ぶ。日中に株価を見られない環境は、この投資法ではむしろ有利に働きます

真似できないこと

  • 資産8億円という規模。年2,000万円の配当は、利回り4%なら元本5億円が必要です。同じ場所を目指す必要はありません
  • 専業投資家としての時間。投資歴40年・早期退職後の環境が前提の部分があります

金額ではなく、考え方を持ち帰るのが現実的です。

※証券会社の口座開設は無料です

打診買いは、1株から買える証券会社が向きます

「まず少額で買ってみる」を実践するなら、単元未満株が使える口座が便利です。
各社の違いは証券口座の比較記事にまとめました。

よくある質問

Q. PER × PBR が15倍以下なら、買っていいということですか?

割安かどうかの目安の1つにすぎません。かんちさんの手順でも、③はあくまで5つのうちの3番目で、①の配当利回りと②の増収増益増配を通った銘柄にだけ適用されます。この数字だけで判断すると、業績が悪化して株価が下がっただけの会社を拾ってしまいます。

Q. 売却基準を作らないのは危なくないですか?

この点は当ブログと考え方が分かれます。かんちさんは「一生持てる会社だけを選ぶ」ことで出口を不要にしていますが、その前提が崩れたとき(減配・業績の構造的な悪化)にどうするかは、自分で決めておく必要があります。当ブログは減配を明確な売却シグナルとして扱っています。

Q. 株主優待も狙ったほうがいいですか?

優待は企業の裁量で変更・廃止できるため、配当より不安定です。当ブログは配当を主役に置いています。ただし「優待の改悪は企業の姿勢が変わったサイン」という読み方は有効で、減配の前触れとして見る価値があります。

Q. 配当利回り3.5%以上という基準は、いまも使えますか?

2026年9月時点で東証プライム全銘柄の予想配当利回りは2.37%なので、3.5%は市場平均の約1.5倍にあたります。目安としては機能します。ただし10年国債の利回りが2.94%まで上がっているため、3.5%では国債との差が0.5ポイント程度しかありません。金利がある時代の見方は金利1%時代の高配当株にまとめています。

まとめ

  • かんちさんは元消防士。49歳で早期退職し、いまは年2,000万円超の配当で生活している
  • 銘柄選びは5つのステップ。利回り3.5%以上 → 増収増益増配 → PER×PBR15倍以下 → 一時要因を除外 → 下がったところで買う
  • 買い方は打診買い。まず少額で買い、納得できたら買い増す
  • 売却基準は作らない。物差しは株価ではなく企業の実力
  • 唯一の例外は株主優待の改悪・廃止。翌朝に成行で売る
  • 暴落はバーゲンセール。配当が握力を生む

持ち帰るなら、この一文だと思います。売却ルールを作るのではなく、売らなくて済む会社を選ぶ。

出口で悩んでいる方は、入口を見直したほうが早いかもしれません。高配当株を買う前に見る5つの数字から始めてみてください。

【免責事項】本記事は情報提供のみを目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。本記事はダイヤモンド・オンラインで公開されているかんちさんの連載記事を参照してまとめたもので、書籍本編の内容をすべて反映したものではありません。記載の投資手法・数値基準は同連載で紹介されているものであり、当ブログが有効性を保証するものではありません。市場データは2026年9月時点の参考値です。株式投資には元本割れのリスクがあります。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。当ブログは投資助言業者ではありません。