金利1%時代、高配当株はまだ買いか|国債2.94%と比べて選び直す3つの基準

日本の政策金利は1.0%になりました。10年国債の利回りは2.94%、メガバンクの10年定期は1.25%です(2026年8月31日時点)。 預金や国債の利回りが上がったぶん、配当利回り3%台は「高配当」と呼びにくくなりました。 ただし答えは「株をやめて預金に戻す」ではありません。税引後で比べると、課税口座の配当4%は国債に0.84ポイントしか勝っていない一方、NISAなら1.66ポイント勝ちます。持つ場所を変えるだけで、差が2倍になります。

📌 この記事でわかること
  • 預金・国債・株の利回りを税引後まで揃えた比較表
  • 配当利回り4%の「上乗せ分」が6年で4分の1に縮んだ理由
  • それでも預金に全部戻さない根拠(増配の効き方を数字で)
  • 利上げで追い風になる業種と、向かい風になる業種
  • 今日できる保有銘柄の点検3ステップ

1. いまの利回りを、税引後まで揃えて並べる

最初に数字を並べます。利回りは税引前で語られることが多いのですが、手元に残る額で比べないと判断を誤ります。 預金の利息も国債の利子も配当も、課税口座では一律20.315%が引かれるためです。

置き場所税引前
利回り
税引後
利回り
100万円を1年
預けた手取り
メガバンク 普通預金0.40%0.319%3,187円
メガバンク 定期1年0.50%0.398%3,984円
メガバンク 定期10年1.25%0.996%9,961円
個人向け国債 変動10年
(基準金利×0.66で試算)
約1.94%約1.546%約15,459円
10年国債(市場利回り)2.94%2.343%23,428円
日経平均(予想配当利回り)1.67%1.331%13,307円
東証プライム全銘柄(予想)2.37%1.889%18,885円
高配当株の目安(課税口座)4.00%3.187%31,874円
高配当株の目安(NISA)4.00%4.000%40,000円

数字の出どころを書いておきます。政策金利1.0%は日本銀行が2026年6月16日の金融政策決定会合で決めたもので、0.75%からの引き上げでした(賛成7・反対1)。 メガバンクの預金金利は三菱UFJ銀行が2026年8月3日から適用しているもので、普通預金は0.30%から0.40%へ、10年定期は0.900%から1.250%へ上がっています。 10年国債利回りとプライム市場の予想配当利回りは、いずれも2026年8月31日時点の数値です。

⚠️ 表の読み方で注意する2点

10年国債の2.94%は市場で取引される利回りで、個人が窓口でその条件で買えるものではありません。 個人向け国債(変動10年)の適用利率は「基準金利×0.66」と決まっているため、同じ水準でも受け取れるのは約3分の2です。表の1.94%はその計算による試算で、9月募集分(第198回債・募集期間9月3日〜9月30日、発行10月15日)の実際の利率は募集開始日に公表されます。

そして最大の違いは、元本が減るかどうかです。預金と国債は満期まで持てば元本が戻ります。株式は戻りません。上の表は利回りだけを揃えたもので、リスクは揃っていません。

2. 配当利回り4%の「上乗せ分」は、6年で4分の1近くまで縮んだ

高配当株を持つ理由は「安全な置き場所より、どれだけ多くもらえるか」でした。この上乗せ分が、金利上昇で大きく削られています。

時期10年国債配当利回り4%との差
2020年ごろ(概数)0%前後約4.0ポイント
2026年8月31日2.94%1.06ポイント

同じ「利回り4%」でも、割に合う度合いは4分の1近くまで縮みました。 6年前は「国債0%か、配当4%か」という比較でしたが、いまは「国債2.94%か、配当4%か」です。元本が減る可能性を引き受けて、上乗せは1.06ポイント。ここが今年の一番大きな変化です。

税引後で見ると、差はさらに小さくなります。課税口座の配当4%は手取り3.187%、国債2.94%は手取り2.343%。差は0.844ポイントしかありません

だからNISAの意味が、以前より大きくなった

ここで効いてくるのがNISAです。NISA口座の配当は非課税なので、4%はそのまま4%です。

持ち方配当4%の手取り国債2.94%(手取り2.343%)との差
課税口座3.187%+0.844ポイント
NISA4.000%+1.657ポイント

同じ銘柄でも、持つ口座を変えるだけで上乗せ幅が約2倍になります。金利が0%の時代は「4.0ポイントか3.2ポイントか」の違いでしたが、いまは「勝っているか、ほぼ引き分けか」の違いになりました。 NISAで受け取る設定にしていないと配当が非課税にならない点は、NISAの配当受け取り方式の記事で詳しく書いています。受取方法が「株式数比例配分方式」になっていないと、NISAで買っても配当に税金がかかります。

3. それでも預金に全部戻さない理由は「増えるかどうか」

上乗せが1ポイントなら預金でいい、とはなりません。預金の金利は自分では増やせませんが、配当は増配で増えるからです。

100万円で利回り4%の株を買い、その会社が毎年3%ずつ増配したとします。配当額は初年度4万円、10年目は52,191円です。買った金額に対する利回り(取得額利回り)は5.22%まで上がります。定期預金1.25%は、10年後も1.25%のままです。

年間配当(税引前)取得額に対する利回り
1年目40,000円4.00%
5年目45,020円4.50%
10年目52,191円5.22%
⚠️ 増配は約束ではありません

上の試算は「毎年3%増配が10年続いたら」という仮定です。累進配当を掲げる会社でも、減配した実例はあります。三菱商事は2016年3月期に最終赤字1,494億円を計上し、配当を70円から50円へ減らしました。 方針の言葉をどう検算するかは累進配当とDOEの記事に、増配率の実態は連続増配ランキングの記事にまとめています。

4. 利上げで追い風になる業種と、向かい風になる業種がある

「利上げは高配当株に不利」とまとめられがちですが、業種によって向きが逆になります。理由は、金利がその会社の収益にどう入ってくるかが違うためです。

業種向きそうなる理由
銀行追い風貸出金利が預金金利より先に上がり、利ざやが広がる
保険追い風保有する債券の利回りが上がり、運用収益が増える
電力・ガス・鉄道向かい風設備投資を借入でまかなうため、支払利息が増える
不動産・REIT向かい風借入コストが増え、加えて国債利回りと利回りを比べられる
商社・海運金利より市況資源価格・運賃の変動が金利の影響より大きい

REITと不動産が二重に不利なのは、借入コストが増えるうえに、投資家が「同じ利回りなら元本が返ってくる国債でいい」と考えやすくなるからです。国債が2.94%まで上がると、利回り4%のREITは相対的に見劣りします。

⚠️ これは構造の説明であって、株価の予測ではありません

表に書いたのは「金利がその会社の損益にどう入るか」という仕組みです。株価は業績・受注・為替・海外市況でも動きます。「銀行株は上がる」と読まないでください。 業種を組み合わせて偏りを減らす考え方はセクター分散の記事に書いています。

5. 今日できる点検を3つに絞りました

金利が変わったからといって、持っている株を売り買いする必要はありません。まず、いま持っているものを新しいものさしで測り直します。

  1. 保有銘柄の利回りを「国債2.94%+何ポイント」の形で書き出す
    利回り3.5%の銘柄なら「+0.56ポイント」です。この数字を見て納得できるかを自分に問います。
  2. 上乗せが1ポイント未満の銘柄は、増配の実績を確認する
    上乗せが小さくても、増配が続いていれば取得額利回りは上がります。逆に増配が止まっている銘柄は、預金や国債と比べる意味が出てきます。判断材料は売り時の4つのサインの記事にまとめています。
  3. 借入の重い会社は、自己資本比率と有利子負債を見る
    電力・不動産・REITなど借入で設備を持つ会社は、金利が上がると支払利息が増えます。自己資本比率40%を目安に、下回る会社は借入の中身まで確認します。

そして新しく買う分は、まずNISAの枠から埋めます。同じ銘柄でも上乗せ幅が約2倍違うためです。NISAの枠を使い切っている場合は、課税口座で買う前に「国債に0.84ポイント勝つために、元本が減る可能性を引き受けるか」を確認します。

※証券会社の口座開設は無料です

NISA口座はどこで開くかで手数料が変わります

金利が上がった今、高配当株はNISAで持つかどうかで手取りが約2倍変わります。
口座ごとの手数料・取扱商品の違いは証券口座の比較記事にまとめました。

よくある質問

Q. 政策金利が上がると、高配当株の株価は下がりますか?

業種によって逆になります。銀行や保険は利ざやや運用収益が改善するため追い風、電力・不動産・REITは借入コストが増えるため向かい風です。ただし株価は金利以外の要因でも動くため、「利上げ=高配当株が下がる」とは言えません。

Q. いま定期預金に移したほうがいいですか?

10年定期の1.25%は、税引後で0.996%です。配当4%の株はNISAなら4.000%、課税口座でも3.187%なので、手取りでは株のほうが上です。ただし預金は元本が戻り、株は戻りません。生活防衛資金は預金、増やす部分は株、と役割で分けるのが基本です。

Q. 配当利回りが何%以上なら「高配当」と言えますか?

2026年8月時点の東証プライム全銘柄の予想配当利回りは2.37%です。市場平均の1.5倍にあたる3.5%あたりが一つの目安になります。ただし10年国債が2.94%まで上がったため、3%前後では上乗せが0.1ポイント未満になります。数字の基準は市場平均ではなく、国債利回りと比べて決めることをおすすめします。

Q. 個人向け国債と高配当株、どちらを選べばいいですか?

個人向け国債(変動10年)の適用利率は基準金利×0.66なので、国債利回りが2.94%でも受け取れるのは約1.94%です。税引後では約1.546%になります。元本が戻る安心を取るなら国債、増配で受取額が育つ可能性を取るなら高配当株です。両方を持って役割を分けることもできます。

Q. 次の利上げはいつですか?

2026年9月の金融政策決定会合は9月17日・18日に開かれます。次の利上げ時期については、企業決算や短観が揃う12月が現実的とする見方があります。時期の予測に賭けるより、金利が上がっても下がっても持ち続けられる銘柄かどうかで選ぶほうが確実です。

まとめ

  • 政策金利1.0%、10年国債2.94%、メガバンク10年定期1.25%(2026年8月31日時点)
  • 配当利回り4%の上乗せは、6年前の約4.0ポイントから1.06ポイントへ縮んだ
  • 税引後で見ると、課税口座の配当4%は国債に0.844ポイントしか勝っていない
  • NISAなら1.657ポイント勝つ。持つ口座を変えるだけで上乗せは約2倍
  • 利上げは銀行・保険に追い風、電力・不動産・REITに向かい風
  • 今日やるのは売買ではなく、保有銘柄を「国債+何ポイント」で測り直すこと

金利が上がったのは、高配当株投資にとって悪い話だけではありません。「利回りが高いから買う」という選び方が通用しなくなっただけです。 比べる相手が国債2.94%になった以上、増配が続くか、借入は重くないか、NISAで持てているか——見る場所を変えれば、判断はむしろはっきりします。

【免責事項】本記事は情報提供のみを目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。記載の金利・利回りは2026年8月31日時点で確認した公表値および市場データに基づく参考値であり、その後変動します。個人向け国債の適用利率は回号ごとに決まるため、本文中の1.94%は基準金利×0.66による試算値です。増配の試算は仮定の数値による計算であり、将来の配当を保証するものではありません。株式投資には元本割れのリスクがあります。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。当ブログは投資助言業者ではありません。