つなぎ売りで配当はもらえません|
配当は打ち消し合い、税金は条件つきで戻ります

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つなぎ売り(クロス取引)は、株価が下がる心配をせずに株主優待だけを受け取る方法です。 ただし配当では使えません。もらう配当と、払う配当落調整金が同額で打ち消し合うからです。 税金は、払った分が譲渡損になるので、特定口座などで配当と損益通算できれば、源泉徴収された分が戻ります。 通算できないときだけ、配当の20.315%が持ち出しになります。

【訂正(2026年10月19日)】初版(2026年9月15日)では「配当の20.315%が必ず持ち出しになる」と書いていました。払った配当落調整金が譲渡損になること(国税庁・措置法通達36・37共−23)と、損益通算で源泉徴収された税金が戻ることを反映しておらず、誤りでした。正しくは、損益通算できれば税金を含めても差し引きゼロで、できない場合に20.315%の持ち出しになります。タイトル・判定表・2章・3章・まとめ・FAQを書き直しました。
【追記(2026年10月19日)】逆日歩の上限の説明(株価の水準で決まること)、持ち出しになる条件(損失を使い切れない場合)、確定申告で通算するときの注意、同じ特定口座で行う前提を補足しました。

まず結論:あなたはやるべきか、やらなくていいか

自分がどちらに当てはまるかで決まります。3秒で判定できます。

こういう人判定なぜ
株主優待がほしい
権利日だけ持って、値下がりは避けたい
やる価値あり優待は満額もらえる。コストは貸株料などで事前に計算できる(税の条件は2章)
配当がほしい
高配当株を買うつもりでいる
やらなくていい配当はもらえない(払う配当落調整金と打ち消し合う)。税の条件も面倒
NISAで持っているそもそも使えないNISA株は信用取引にも現渡にも使えない
ずっと持ち続けたいやらなくていいつなぎ売りは権利日をまたぐ数日だけの技
📌 ひとことで言うと

つなぎ売りは優待をタダで取る技であって、配当をタダで取る技ではありません。 当ブログの読者のように高配当株を買う方は、使う場面がほとんどありません。 ここまでで判断がついた方は、読み終えていただいて構いません。

🎬 この記事の内容を動画で見る(3分0秒)
配当が打ち消し合う仕組みと、損益通算で税金が戻る3つの条件、コストの内訳を3分で確認できます。記事はこの続きで、通算できないときの注意と逆日歩まで載せています。

この先は、なぜそうなるのかを知りたい方向けです。 優待でつなぎ売りを使う予定がある方は、税金の条件(2章)、コストの内訳(3章)、逆日歩の注意(4章)まで読んでください。

1. つなぎ売りは「買う」と「借りて売る」を同時にやる

そもそも信用売りとは、株を借りて売ることです

信用売りは、証券会社から株を借りて、その株を売る取引です。 持っていない株を売れるのは、借りているからです。

借りたものは返します。つなぎ売りでは、買っておいた同じ株をそのまま渡して返します。

📌 信用売りを一言でいうと

株の借金です。お金を借りるのではなく、株そのものを借ります。 株価が上がると返すのが苦しくなり、下がると楽になります。 ふつうに株を買ったときと、損得が真逆になると覚えてください。

買いと借金を同時に持つので、株価が動いても損得ゼロ

つなぎ売りでは、同じ銘柄を同じ株数だけ、現物で買い、信用で売ります。 手元に株が1つあり、同時に株1つぶんの借金を負っている状態です。

株価が100円上がったとします。持っている株は100円得をします。 同時に、返さなければならない株も100円高くなるので100円損をします。 足すとゼロです。下がったときも同じで、損と得が入れ替わるだけです。

値動きは消えます。ところが株主優待をもらう権利は、買ったほうの株に残ります。 この状態のまま権利付最終日(優待をもらえる人が決まる日)をまたぐのが、つなぎ売りです。

手順は3ステップ

いつやること
権利付最終日の寄付前
(よりつき=その日の最初の取引)まで
同じ銘柄・同じ株数で「現物買い」と「一般信用の新規売建(うりだて=信用売りを始めること)」を発注する
権利落ち日
(翌営業日)以降
信用売りの建玉(たてぎょく=返していない借り分)を「現渡」で返済する
その後優待と配当が届く。同時に配当相当額の支払いが差し引かれる

最後の「現渡(げんわたし)」は、買ってある株をそのまま渡して、株の借金を返す方法です。 市場で売り買いをしないので、返すときの株価がいくらであっても損得は出ません。 買った株と借りた株が、ここで相殺されて消えます。

権利付最終日がいつかは銘柄の決算月で決まります。2026年の日付は 権利付最終日カレンダーにまとめています。

2. 配当は打ち消し合う。税金は損益通算できれば戻る

ここが本題です。優待と違い、配当はもらえません。ただし、条件がそろえば税金を含めても差し引きゼロで済みます。

借りた株にも、本当の持ち主がいます

信用売りで借りた株は、どこかの誰かが持っていた株です。 その持ち主は、本来なら配当を受け取れるはずでした。

ところが、あなたがその株を売ってしまったので、持ち主のもとに配当が届きません。 そこであなたが肩代わりして払います。 これを配当相当額(配当落調整金)といいます。

つまりつなぎ売りの最中は、配当を受け取ると同時に、配当を払ってもいる状態です。 税金を除けば、もらう額と払う額は同額で、差し引きゼロです。配当はもらえません。 税金がどうなるかは、次の条件で分かれます。

払った配当落調整金は「譲渡損」になる

現物側の配当には、受け取るときに20.315%の税金が源泉徴収されます(特定口座・源泉徴収ありの場合)。 いっぽう、信用売り側が払う配当落調整金は、税務上は配当ではありません。 売付けを行った者が支払う配当落調整額は、株式の譲渡による収入金額から控除すると定められています (国税庁・措置法通達36・37共−23)。つまり払った分は譲渡損です。

上場株式の譲渡損は、配当と損益通算できます。通算しきれない損失は、確定申告で翌年以後3年間繰り越せます (国税庁 No.1474)。

どちら側配当の扱い税金の扱い
現物買い配当金を受け取る20.315%が源泉徴収される(税引後は配当の79.685%)
信用売り配当落調整金を100%支払う譲渡損になり、配当と損益通算できる
通算できたとき源泉徴収された税金が戻り、配当は差し引き0円

配当が2,000円の例で計算します。現物で受け取るのは、税金406円が引かれた1,594円。信用売りで払うのは2,000円です。 年末に損益通算されると、源泉徴収された406円が戻ります。 1,594円+406円−2,000円=0円。優待は買ったほうの株にしか付かず肩代わりも要らないので、 優待は取れて、配当は取れないという結果になります。

損益通算が自動で働く条件

特定口座で次の3つがそろうと、年末に自動で損益通算され、源泉徴収された税金は翌年1月初旬に還付されます (SBI証券・松井証券の案内)。

  • 特定口座が「源泉徴収あり」
  • 特定口座に「配当受入あり」を設定している
  • 配当金の受取方法が「株式数比例配分方式」

現物と信用売りは、同じ証券会社の同じ特定口座で行う前提です。証券会社をまたぐと自動では通算されず、確定申告が必要になります。

そろわない場合は、確定申告で申告分離課税を選べば通算できます。 ただし、申告すると合計所得金額が増える場合があり、扶養や国民健康保険料に影響することがあります。 申告分離課税を選んだ配当には、配当控除も使えません(松井証券の案内)。

NISAで配当を非課税にするときと同じ「株式数比例配分方式」の設定が前提になるので、 株式数比例配分方式のデメリットは3つも確認してください。

⚠️ 損失を使い切れないと、配当の20.315%が持ち出しになる

払った配当落調整金の譲渡損は、同じ年の配当や、ほかの譲渡益と相殺できます。 相殺する先がなく繰越もしない場合や、配当を特定口座に入れていないのに確定申告もしない場合は、源泉徴収された税金が戻りません。 このときだけ、持ち出しが配当額に比例して発生します。100株あたりで計算すると次のとおりです。

  • 中間配当20円 → 受け取り1,594円・支払い2,000円・持ち出し406円
  • 中間配当25円 → 受け取り1,993円・支払い2,500円・持ち出し507円
  • 中間配当30円 → 受け取り2,391円・支払い3,000円・持ち出し609円

取引の前に、3つの条件がそろっているかを確認してください。 そろっていれば、配当の大きさは税引後のコストに影響しません(ただし払う現金は増え、還付は翌年1月初旬です)。 税額は円未満を切り捨てて計算しています。個別の申告は、税務署や税理士に確認してください。

3. かかるコストは貸株料が中心。10万円の取引で21円

つなぎ売りで出ていくお金は次のとおりです。株価1,000円の株を100株(10万円)、年間配当40円・中間配当20円という条件で計算します。 配当の税は、損益通算できる場合とできない場合で分けて示します。

コスト計算通算できる場合通算できない場合
貸株料(かしかぶりょう)
=株を借りるレンタル料(2日分)
10万円 × 年3.90% × 2日 ÷ 36521円21円
現物の買付手数料手数料無料のコース0円0円
信用売建の手数料手数料無料のコース0円0円
現渡の手数料—0円0円
配当の税の差額2,000円 × 20.315%0円
(406円が還付)
406円
合計21円427円

通算できる場合、コストのほぼ全部が貸株料の21円です。 通算できない場合は、コストの95%が配当の税の差額(406円)になります。 「つなぎ売りは手数料が安い」は本当ですが、税の条件を確認しないと、実際のコストが大きく変わります。

優待の価値がコストを上回るかで判断する

このコストに対して優待の価値がいくらかを比べます。1,000円のクオカードなら、通算できる場合は979円の得、通算できない場合は573円の得です。 優待が500円分なら、通算できる場合は479円、できない場合は73円の得にしかなりません。 通算できない場合は、配当が多い銘柄ほど、この計算は厳しくなります。

📌 貸株料の年率(楽天証券・2026年9月13日時点)
  • 制度信用:年1.10%
  • 一般信用「無期限」:年1.10%
  • 一般信用「短期」:年3.90%
  • 一般信用「いちにち信用」:年0.00%(ただし当日中に決済するためつなぎ売りには使えません)

4. 制度信用を使ってはいけない理由は逆日歩

信用取引には制度信用と一般信用の2種類があります。 制度信用は証券取引所のルールで動く仕組み、一般信用は証券会社が独自に用意する仕組みです。 つなぎ売りで使うのは一般信用です。 制度信用で売ると、逆日歩(ぎゃくひぶ・品貸料)がかかることがあるからです。

逆日歩は、売り注文が多くて株が足りなくなったときに、売り手が支払う株のレンタル料です。 問題は金額ではなく、取引する時点では発生するかどうかも、いくらになるかもわからないという点にあります。

⚠️ 権利確定日の前は、逆日歩の上限が引き上げられる

逆日歩には、1株あたりの最高料率(上限)があり、株価の水準で決まります。楽天証券の記事の例(200円の株)では、上限は1円です。 配当や優待の権利確定日の前、貸株注意喚起銘柄や売り建て停止措置の銘柄などは、この上限が2倍・4倍に引き上げられます。 株券の調達が想定以上に難しいときは、臨時措置で10倍になることもあります。

同じ例で、200円の株を2,000株売り建てた場合、上限の1円で2,000円、10倍(10円)なら2万円です。 ただし10倍は「かなり珍しいケース」とされ、引き上げられても、実際の入札では安く決まることが多いと説明されています。 それでも、取引する時点ではいくらになるか分からず、優待の価値を超える可能性があります。

一般信用なら逆日歩は発生しません。つなぎ売りをするなら一般信用を選んでください。 ただし在庫が限られており、人気銘柄は権利付最終日が近づくと尽きます。

5. NISA口座の株は、つなぎ売りに使えない

NISA口座の株式はつなぎ売りに使えません。理由は2つです。

  1. NISA口座では信用取引ができない。NISAは現物取引だけが対象です
  2. NISA口座の株式は現渡の対象外。信用取引の担保(代用有価証券)にもなりません

つなぎ売りをするなら、現物側も課税口座(特定口座・一般口座)で買う必要があります。

裏を返すと、NISAで高配当株を持つ人には、つなぎ売りを使う場面がほとんどありません。 NISAでは配当が非課税で満額受け取れるので、わざわざつなぎ売りで配当を打ち消しに行く理由がないからです。 NISAで配当を非課税にする設定は株式数比例配分方式のデメリットは3つで解説しています。

6. まとめ

📌 つなぎ売りで押さえること
  • 信用売り=株を借りて売ること。買いと同時に持つと値動きが消える
  • 借りた株の持ち主に配当を肩代わりするので、配当は打ち消し合い、つなぎ売りではもらえない
  • 払った配当落調整金は譲渡損。配当と損益通算できれば、源泉徴収された税金は戻る(特定口座の源泉徴収あり・配当受入あり・株式数比例配分方式なら年末に自動)
  • 通算できないときだけ、配当の20.315%が持ち出し。コスト合計は通算できれば21円、できなければ427円(10万円・配当2,000円の例)
  • 制度信用は逆日歩の金額が事前にわからないので使わない
  • NISA口座の株式は信用取引にも現渡にも使えない

優待をタダで取る話と、配当をタダで取る話は別物です。混ぜて考えると、配当も取れるつもりで始めてしまいます。 配当が目的なら、普通に現物で買って持ち続けるのが正解です。つなぎ売りでは配当をもらえません。

※本記事の手数料・貸株料・逆日歩の仕組みは、楽天証券・松井証券・SBI証券の公開情報を2026年9月13日に確認したものです。 貸株料の年率は楽天証券の信用取引手数料ページ、配当落調整金の計算式(買建84.685%・売建100%・所得税源泉徴収相当額15.315%)は松井証券、 逆日歩の上限と計算例は楽天証券のメディア記事、NISA口座の株式が現渡の対象外である点はSBI証券の記載に基づきます。 配当落調整金の税務上の扱いと損益通算は、国税庁の措置法通達36・37共−23・タックスアンサーNo.1474と、SBI証券・松井証券の案内に基づきます(2026年10月19日に確認)。 料率・取扱いは証券会社と時期によって変わります。取引の前にご自身の口座のある証券会社で最新の条件を確認してください。 税率20.315%は所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計です。

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