日本製鉄(証券コード:5401)の配当推移をIRBANKで見ると、 2026年3月期は前期比「-136円」の減配と表示されています。 これだけ見ると、業績が急激に悪化した危険な銘柄に見えます。
結論を先に書きます。この-136円は実態より大きく見えている数字です。 2025年10月に株式を1株から5株に分割したため、分割前の中間配当と分割後の期末配当が 単純に並んでいるだけです。分割後の株数に揃えると、実質の減配幅は25%。 それでも減配は減配ですが、136円ではありません。
そして表記の歪み以上に見ておくべき数字があります。 2026年3月期、日本製鉄の当期利益は前期比97%減の171億円まで落ち込みました。 それでも会社は配当を大きく削らず、配当性向731%という異例の水準まで許容しました。 この2つを分割調整済みのデータで正直に見ていきます。
基本情報
現在の株価・配当情報
100株買うには約6万7,770円が必要です。年間の配当金は税引前で2,400円、 NISA口座以外なら約20.315%が引かれて手取りは約1,912円になります。 大型株の中では少額から買いやすい価格帯です。
スクリーニング指標
数値はIRBANK・Yahoo!ファイナンス(2026年8月13日時点/2026年3月期確定値)ベースの参考値です。
| 指標 | 日本製鉄の数値 | 目安・コメント |
|---|---|---|
| 配当利回り (株価に対する配当金の割合) |
3.54%(2027/3期予想) | 目安3.5%以上 ✅ わずかに上回る |
| 自己資本比率 (総資産に占める自己資本の割合) |
37.14% | 40%以上 ⚠️ わずかに下回る |
| PER (株価収益率・割安度の目安) |
12.21倍(予想) | 15倍以下 ✅ |
| PBR (株価純資産倍率) |
0.63倍(実績) | 1.5倍以下 ✅ 解散価値を下回る水準 |
| 配当性向 (利益のうち配当に回す割合) |
731%(2026/3期実績) | 20〜60% ❌ 利益急減の年は異例の水準 |
| ROE (自己資本利益率・経営効率) |
5.15%(予想) | 8%以上 ⚠️ 下回る |
| 連続増配年数 | なし(2026/3期は減配) | 増配継続中ではない |
| 時価総額 (会社全体の値段) |
約3兆6,417億円 | 500億円以上 ✅ 超大型株 |
❌が1つ付きました。配当性向731%は、利益をはるかに超える配当を出したという意味です。 単年でこの水準が続けば「タコ配」に分類されますが、日本製鉄の場合は 2026年3月期に一過性の損失で利益が急減した年に限った数字です。 翌2027年3月期の会社予想では配当性向は58.6%まで下がる見込みです。継続するかどうかは来期決算で確認が必要です。
10期分のグラフ
過去10期の配当金推移(減配した年も載せます)
金額は2025年10月1日の「1株→5株」分割を調整した後の値です。 2026/3期は中間配当(分割前基準・60円)を分割後換算(÷5=12円)し、期末配当(分割後基準・12円)と合算しています。
| 年度 | 1株あたり年間配当金 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2016/3期 | 3.6円 | - |
| 2017/3期 | 9.0円 | 増配 +5.4円 |
| 2018/3期 | 14.0円 | 増配 +5.0円 |
| 2019/3期 | 16.0円 | 増配 +2.0円 |
| 2020/3期 | 2.0円 | 減配 -14.0円 |
| 2021/3期 | 2.0円 | 維持 |
| 2022/3期 | 32.0円 | 増配 +30.0円 |
| 2023/3期 | 36.0円 | 増配 +4.0円 |
| 2024/3期 | 32.0円 | 減配 -4.0円 |
| 2025/3期 | 32.0円 | 維持 |
| 2026/3期 | 24.0円 | 減配 -8.0円(実質) |
| 2027/3期(予想) | 24.0円 | 維持 |
「-136円の大減配」の正体(株式分割の仕組み)
日本製鉄は2025年10月1日に株式を1株から5株に分割しました。 株価の投資単位を下げて、個人投資家が買いやすくするための分割です。
この分割が2026年3月期の配当を分かりにくくしています。 中間配当(2025年9月末が基準日)は分割前の株数に対して1株60円。 期末配当(2026年3月末が基準日)は分割後の株数に対して1株12円でした。 IRBANKなどのデータベースがこの2つを単純に足すと72円になりますが、 前期比較の基準となる株数が違うため、そのままでは比較できません。
分割後の株数に揃えるには、中間配当60円を5で割ります。60÷5=12円。 期末配当12円と合わせると、実質の年間配当は24円です。 前期2025年3月期の32円(分割前160円÷5)と比べると、24円は25%の減配にあたります。
財務の安定性(純利益と配当性向)
鉄鋼は景気サイクルで利益の振れが大きいため、単年ではなく流れで見ます。
| 年度 | 当期利益(親会社帰属) | 配当性向 | 1株配当(調整後) |
|---|---|---|---|
| 2018/3期 | 195億円 | 34.2% | 14.0円 |
| 2019/3期 | 251億円 | 28.4% | 16.0円 |
| 2020/3期 | ▲432億円 | 赤字 | 2.0円 |
| 2021/3期 | ▲32億円 | 赤字 | 2.0円 |
| 2022/3期 | 637億円 | 23.1% | 32.0円 |
| 2023/3期 | 694億円 | 23.9% | 36.0円 |
| 2024/3期 | 549億円 | 26.8% | 32.0円 |
| 2025/3期 | 350億円 | 45.6% | 32.0円 |
| 2026/3期 | 171億円 | 731% | 24.0円 |
| 2027/3期(予想) | 2,200億円 | 約58.6%(試算) | 24.0円 |
2025/3期から2026/3期にかけて、当期利益は350億円から171億円へ97%減しています。 それでも配当の削減は分割調整後で8円(25%)にとどめました。 会社が中期経営計画で掲げる「下限配当24円/株(分割後)」の方針が、この年の下支えになっています。
2026年3月期の配当性向731%は、その年の利益の7倍を超える配当を出したという意味です。 単年なら過去の利益の蓄えで払えますが、これが数年続く会社は「タコ配」に分類されます。 日本製鉄は2027/3期に当期利益2,200億円(USスチール寄与のフル反映)を会社予想しており、 この予想どおりなら配当性向は約58.6%まで下がります。
2027/3期の業績回復は、米国鉄鋼大手USスチール買収の収益貢献が通期で乗ること、 2026年3月期にあった一過性の損失が消えること、国内拠点の稼働が正常化することの3点が理由とされています。 この予想が未達に終われば、配当性向731%が一過性で終わらない可能性も残ります。
🐨 コアラ先生のひとこと
この銘柄に注目した理由:
「データベースの数字をそのまま信じると何を見誤るか」を説明するのに、これ以上の教材がないからです。
IRBANKの表記だけを見た人は「-136円の大減配」に驚いて投資判断を誤りかねません。
実態は分割の表記のズレで、実質の減配幅は25%。それでも減配は減配なので、良い話に偽装もしません。
初心者へのアドバイス:
配当性向731%という数字だけを見て「危険な銘柄」と即断しないでください。
利益が急減した1年に限った数字か、複数年続いているのかで意味がまったく変わります。
日本製鉄は2027/3期に利益回復を会社予想していますが、予想が未達なら話は変わります。
買うなら11月の中間決算で回復の進捗を確認してから、打診の100株から入るのが合っています。
注意点:
リスクは3つあります。1つ目は景気サイクル。鉄鋼需要が落ち込めば2020年3月期・2026年3月期のような
利益急減が再び起こり得ます。2つ目はPBR0.63倍という割安評価が今後も続くとは限らない点です。
割安には理由があり、市場が業績回復を疑っている可能性もあります。
3つ目は自己資本比率37.14%。目安の40%をわずかに下回っており、
景気敏感業種としては財務の余裕が大きいとは言えません。
よくある質問
見た目ほどの減配ではありません。2025年10月1日に1株を5株にする株式分割があり、2026年3月期は中間配当(分割前基準・60円)と期末配当(分割後基準・12円)が混在しています。分割後の株数に統一すると、前期32円(160円÷5)から今期24円へ、実質25%の減配です。
2026年3月期、日本製鉄は当期利益171億円に対し配当総額約1,465億円を支払いました。利益の7倍以上を配当に回したという意味です。会社が掲げる「下限配当24円」の方針を守るため、利益が急減した年もこの水準を維持した結果です。
あります。分割調整後で見ると、2020年3月期に16円から2円へ大きく減配しました。米中貿易摩擦や国内需要の落ち込みで最終赤字431億円を計上した年です。2024年3月期・2026年3月期も減配しています。増配一本槍の銘柄ではありません。
買えます。成長投資枠の対象です。100株で約6万7,770円と、大型株の中では少額から始めやすい価格帯です。NISA口座なら配当金の約20.315%の税金がかかりません。受取方法を「株式数比例配分方式」に設定しておく必要があります。
配当金・業績データ(出典:IRBANK)
配当金:https://irbank.net/E01225/dividend
財務データ:https://irbank.net/5401/pl
トップページ:https://irbank.net/5401
株価・発行済株式数データ
現在株価677.7円・発行済株式数53億7,363万株は2026年8月13日時点のYahoo!ファイナンス掲載値です。
Yahoo!ファイナンス:https://finance.yahoo.co.jp/quote/5401.T
配当利回りの計算方法
年間配当金 ÷ 現在株価 × 100 = 配当利回り(%)
株式分割の調整
2025年10月1日に1株→5株の分割が行われました(決議2025年8月1日、基準日2025年9月30日)。
2026年3月期の中間配当(分割前基準・60円)は分割後株数換算で12円(60÷5)とし、
期末配当(分割後基準・12円)と合算して実質24円としています。
2025年10月より前の配当金は、発表額を5で割って現在の株数に揃えています(例:2025年3月期160円 ÷ 5 = 32円)。
2027年3月期の業績予想
当期利益2,200億円(USスチール寄与のフル反映等)は会社発表の2026年3月期決算短信(2026年5月13日発表)に基づきます。
会社発表の一次情報
公式IR:https://www.nipponsteel.com/ir/
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【免責事項】本記事は情報提供のみを目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。 掲載データは2026年3月期(2026/3期)確定値をベースにしています(出典:IRBANK)。 株価は2026年8月13日時点です。株価・配当金・各種指標は常に変動します。投資にはリスクが伴います。 投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。 当ブログは投資助言業者ではありません。
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