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持っている高配当株が増配したら、うれしいものです。ただし「増えた」という事実だけでは足りません。 物価の上がり方より速く増えているか——ここを見ないと、金額は増えているのに買えるものは減っていきます。
高配当株60銘柄の3年間(2023年9月11日〜2026年9月11日)を実測しました。 増配したのは47社。そのうち7社は、増配率が物価上昇に届いていませんでした。 横ばい6社・減配7社と合わせると、60社中20社(33%)で配当の実質的な価値が目減りしています。 3社に1社です。
まず結論:あなたの持ち株はどれに当てはまるか
| 3年間の増配率 | 判定 | 意味 |
|---|---|---|
| 9.3%以上 | 合格 | 年3%の物価上昇にも追いついている。60社中35社 |
| 6.1%〜9.2% | ぎりぎり | 年2%には勝つが年3%には負ける。60社中5社 |
| 0.1%〜6.0% | 実質は目減り | 増配しているのに物価に負けている。60社中7社 |
| 0%以下(横ばい・減配) | 目減り | 60社中13社 |
見るのは増配したかどうかではなく、増配の速さです。 連続増配20年でも、毎年1円ずつなら実質は減っています。ここまでで判断がついた方は、読み終えていただいて構いません。
1. 基準は「年2%」。3年なら6.1%です
物価がどれだけ上がるかは誰にも分かりません。そこで日本銀行が目標に掲げる年2%を基準にします。 複利で効くので、3年では6.1%(1.02の3乗)です。年3%なら3年で9.3%になります。
つまり3年前に100円もらっていた配当が、今106円になっていなければ、実質的には増えていないという計算です。 105円で「増配だ」と喜んでいる状態は、物価の上がり方に1円届いていません。
連続増配の記録は、1円でも増やせば続きます。年数が長いことと、増え方が速いことは別の話です。 記録の見方は連続増配ランキングの正しい使い方にまとめています。
2. 増配しているのに物価に負けていた7社
実際に、3年の増配率が6.1%に届かなかった7社です。すべて増配企業であることに注意してください。
| 会社 | 年間配当の変化 (3年) | 増配率 | 今の配当利回り |
|---|---|---|---|
| 蔵王産業(9986) | 100円 → 105円 | +5.0% | 4.21% |
| ステップ(9795) | 85円 → 89円 | +4.7% | 3.94% |
| セイノーホールディングス(9076) | 100円 → 104円 | +4.0% | 3.87% |
| NTT(9432) | 5.1円 → 5.3円 | +3.9% | 3.02% |
| 竹本容器(4248) | 36円 → 37円 | +2.8% | 4.23% |
| 住友倉庫(9303) | 101円 → 103円 | +2.0% | 2.50% |
| ヨンドシーHD(8008) | 83円 → 84円 | +1.2% | 4.08% |
※年間配当は、直近1年と3年前の1年にそれぞれ権利確定した配当の合計です。株式分割があった会社は分割後の株数に換算しています。NTTの1株あたり配当が小さいのは2023年7月に1株を25株へ分割したためで、この分割は集計期間(2023年9月〜)より前に完了しています。
いちばん下のヨンドシーHDは、3年で1円だけの増配です。配当利回りは4.08%と高く、画面上は優秀な高配当株に見えます。 それでも、受け取る配当で買えるものは3年前より減っています。
NTTは15期連続増配を続けている会社です。それでも直近3年の増配率は3.9%で、年2%の物価上昇に届きません。 記録は途切れていませんが、増え方は緩やかになっています(NTT(9432)の記事)。
3. 反対に、3年で配当が2倍以上になった4社
同じ「増配企業」でも、速さはここまで違います。
| 会社 | 増配率(3年) | 株価の変化(3年) |
|---|---|---|
| 立川ブラインド工業(7989) | +163.2% | +82.7% |
| TOA(6809) | +125.0% | +53.2% |
| 三菱UFJ(8306) | +109.8% | +189.6% |
| 小松ウオール工業(7949) | +108.0% | +85.9% |
増配率の中央値は23.6%、上位4分の1は46.0%以上、下位4分の1は9.2%以下です。 「増配企業」とひとくくりにすると、この差が見えません。
立川ブラインド工業が突出しているのは、2026年2月にDOE4.0%を下限とする方針へ変えたためです。 配当を利益ではなく純資産に対して決める仕組みで、くわしくは累進配当・DOE・総還元性向の違いで解説しています。
4. 自分の持ち株で計算する(3分)
- 3年前の年間配当を調べる。証券会社の銘柄ページか会社のIRページの配当実績で見られます。中間と期末を足した1年分です
- 今の年間配当で割る。105円 ÷ 100円 = 1.05 → 増配率5.0%
- 6.1%と比べる。届いていなければ、増配していても実質は目減りです。年3%で考えるなら9.3%が基準になります
分割があると1株配当は下がります。そのまま比べると全社が減配に見えます。 60銘柄のうち16社が3年で分割していました。見分け方は 株式分割で配当は「減ったように見える」だけですに書いています。
5. 物価に負けている株を、売るべきか
売る必要はありません。判断が変わるのは次の1株を買うときです。
- 持ち続ける——配当は減っていません。売れば手数料と税金がかかり、次の銘柄が速い保証もありません
- 買い増しは止める——同じ資金なら、増配率が物価を超えている会社に回すほうが実質は増えます
- 理由を確かめる——利益が伸びていないのか、方針として配当を抑えているのか。前者なら次は減配の可能性もあります
高配当株を買うときに見る数字は高配当株を買う前に見る5つの数字にまとめています。 増配率はこの5つに含めていませんでしたが、今回の実測を受けて6つ目として加える価値があります。
6. まとめ
- 増配したのは47社。うち7社は増配率が物価上昇(3年6.1%)に届かない
- 横ばい6社・減配7社と合わせ、60社中20社(33%)が実質目減り
- 年3%の物価(3年9.3%)を基準にすると、届かない増配企業は12社に増える
- 増配率は中央値23.6%。上位4分の1は46.0%以上、下位4分の1は9.2%以下
- 3年で配当が2倍以上になったのは4社(最大+163.2%)
- 見るのは連続増配の年数ではなく、増配の速さ
増配のニュースは「良い知らせ」として届きます。ただし1円の増配も、100円の増配も、同じ「増配」という言葉で報じられます。 受け取る側で速さを測らないと、実質的に減っていることに気づけません。
配当そのものが3年でいくら積み上がったのかは、 高配当株を3年持ったら、いくら増えたのかで実測しています。
※本記事の配当データは、高配当株60銘柄について2026年9月15日に取得した2023年9月11日〜2026年9月11日の実績値です。 増配率は「直近1年に権利確定した配当の合計 ÷ 3年前の1年間に権利確定した配当の合計」で計算し、株式分割は分割後の株数に換算しています。 物価上昇の基準に用いた年2%は日本銀行が掲げる物価安定の目標であり、実際の消費者物価指数の変動とは異なります。 将来の配当額や物価を予測するものではありません。
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特定の銘柄の購入を勧めるものではありません。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。 当ブログは投資助言業者ではありません。株価および配当は変動します。 投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。
